フリーアナウンサーの深井ゆきえです。
仕事にプライベートに忙しく過ごしている中で、何気なく見過ごしてしまっていることや、忘れてしまい「なかったこと」になりがちな些細なこと。“伝える”仕事に携わっているフリーアナウンサーの私が、そんな気付きを言葉にしてすくい取り、考えを巡らせ、日々の中で積み重ねていきます。
子どもの夏休みが終わり、自分の意思で行動できる幸せを噛みしめる
今年は「残暑」という言葉がどうもしっくりこない。秋の体感がベースにありつつ、「まだ終わらせないぜ」と夏の太陽ががんばるイメージが、残暑。でも今年は、夜の虫の鳴き声が変わったこと、日が短くなったこと以外、肌感覚としての秋がなかなかやってこない。いつになったら「秋の夜風で風邪ひかないようにね」なんて言えるんだろう。
見渡すと稲穂の先端が黄色く色づき、コスモスも満開だというのに。自分の体感が、周りの、季節のスピードについていけず、まるで脳内でバグを起こしているような感覚になる。
そんな中、唯一「ああ、夏は終わったのね」と感じられる時間がある。月曜日、子どもたちを学校に送り出した後に訪れる、ひとときの静寂だ。自分のペースで家事ができる、コーヒーを飲める、自分の意志でスケジューリングできる、この幸せたるや…。
やはり、人間は目標(洗濯物は7時台のうちに干しちゃいたいとか、どんな小さなものであっても)に向かって走り出している最中に、不意に邪魔をされることが最大のストレスと感じる生き物なのかもしれない。
一方、家に帰って子どもがいないことで感じた虚無感
一方、木曜日は違った。木曜・金曜は、午前中にラジオの3時間半の生放送があるので5時には家を出る。生放送、ナレーション録りなどを終えて、他の仕事がなければ午後1時前には家に着ける。夏休み中は、「子どもたちがお腹を空かせている」といつも以上に早く帰ろうと必死だった。その名残が9月に入っても抜けない。慌てて帰宅して玄関のドアを開けた瞬間、人の気配がないことに気づく。そっか、誰もいないんだよね…。ふと、虚無感がわたしを襲う。
子育てって夏と似てると思う。わくわくして楽しくて仕方がない日もあれば、もう暑苦しくて「ちょっともう勘弁してよ」と思う日もある。早く終わってくれないかと思うのに、いざ過ぎてみると急にさびしくなったりもする。
私の子育てはいま“残暑”
よく考えてみると、わたしの子育てはいま、「残暑」だ。もともと料理のお手伝いが好きだった小4の次女の誕生日、夏のはじめにプレゼントした料理とお菓子のレシピ本。夏休み中、彼女はそれらの本を見ながらたくさん作ってくれた。一人で。生放送を終えて急いで帰宅すると、良い香りが迎えてくれることが何度もあった。アサリのパスタがダイニングに鎮座して「おかえり~」と迎えてくれた時には心底驚いた。あの、つい最近まで赤ちゃんだったひとがお母さんみたいになってる!と(笑)。
「これ以上暑いのはもう勘弁」と大好きな梨をほおばりながら、翌日スイカを丸々一個買ってしまった。「連日30度超えだもの。まだまだスイカの季節よね」と。夏真っ盛りのときよりも豪快に、スイカにかぶりつく。秋の準備はしつつ、味わいつくそうと思う。だって、きっとあと少ししたら、また夏が恋しくなるのだから。
フリーアナウンサー。Date fm「Morning Brush(7:30~11:00)木・金曜担当。元ミヤギテレビ。おいしいものを食べたい欲が人一倍強く、趣味は季節の手仕事というオーガニックオタク。2人の娘の子育てと仕事、自分時間のバランスが目下の課題。
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