フリーアナウンサーの深井ゆきえです。
仕事にプライベートに忙しく過ごしている中で、何気なく見過ごしてしまっていることや、忘れてしまい「なかったこと」になりがちな些細なこと。“伝える”仕事に携わっているフリーアナウンサーの私が、そんな気付きを言葉にしてすくい取り、考えを巡らせ、日々の中で積み重ねていきます。
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「お弁当ボイコット事件」
バタン!
…今日も絶賛思春期の13歳・中1の娘が自室のドアを閉める音は、苛立ちに満ちている。
「お弁当箱、早く出して」と立て続けに言ったことが気に障ったのだろうか。だからってそんなに激しくドアを閉めなくても…。いや、ここで反応してはいけない。息をふうっと大きく吐く。ホルモン、これはホルモンのせいだ。落ち着けわたし。
怒りとやるせない気持ちを細かく刻んでやわらかくするように、いつも以上にキッチンでのみじん切りに力がこもる。今日は長女の大好きなハンバーグだ。
長女の態度にプッツン 母親だって人間、傷つくのです
30分後。息を大きく吸って、不自然なくらい精一杯優しく声をかける。
私「〇〇ちゃーん!ご飯だよーーー♪」
長女「え?あーもうっ、今無理なんだけどっ!!」
…その瞬間、何かが私の中でプチっと切れる音がした。ご飯を作ってどうして怒られなければならない?反抗期、思春期とはいえいくらなんでも理不尽すぎる。このやんごとなき事態をスルーするなどというおおらかな器量は私にはない。
「…わかりました。では、ママは明日からあなたのお弁当は作りませんっ!」
あまりにも腹が立ち、思わず叫んだ。涙がボロボロ出てきた。ああ、言ってしまった。今回ばかりは堪忍袋の尾が切れた。自分でも大人気ないとは思う。でも!いくら思春期だからとはいえ、これはやっていられない。ママだって人間だ。傷つくんだ。そうだそうだ、これはママの反抗期だ!こっちも生理前でホルモン乱れてるんだよ!!
怒っているのに作ってしまったおかずの数々
翌朝。いつも通りの時間に起きてきた中1の怪獣。いつも通り前髪のセットに30分。その後大きなため息をつきながら、冷蔵庫の中の作り置きおかずを詰めている。そう、お弁当作りません宣言をしておきながら、母は昨夜おかずをいくつか作ってしまったのだ。
でもその「詰める」が意外と難しいのよ…チラチラと様子を伺う。少し隙間はあるがそれなりに「お弁当」の形をしている。何事もなかったかのように彼女はいつも通りの時間に出発した。
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またまた作ってしまったおかずを、器用に詰める娘…
翌日。彼女は前髪に命をかけた後、前日の夕飯の残り物も加えて昨日以上に器用に隙間なく詰めていく。所要時間も昨日の半分。どこか楽しそう。…だめだ、これは全く効いていない。なんだこれ。自分で「お弁当作らない宣言」をしておきながら、どうして作り置きなんてしちゃったんだろう。己の中途半端さが嫌になる。
案の定、見かねた夫が一言。「意味ないからもうやめたら?」
はい、その通りです。。
「雨降って地固まる」
その日。長女が帰宅後、できるだけ感情を抑えて自分の気持ちを伝えた。
あなたに元気でいてほしいから、毎日ご飯やお弁当を作っていること。
ご飯を作ることは親の務めだけれど、感謝の気持ちは忘れてほしくないこと。
自分の思い通りに世界は動かないから、言葉で要求を伝えてほしいこと。
長女は、「わかった。ごめんなさい。」と拍子抜けするくらい素直に謝った後、「でも私、お弁当詰めるの結構上手くない?!今日のお弁当、友達に褒められたもん♪」とニッコニコで抱きついてきた。
もう…なんだこれ、反則。嬉しい。
確かに、万が一ママがお弁当を作れない日があっても、なんとかなりそうなことがわかってよかったかもしれないね。
「雨降って地固まるってこういうことを言うんだね」と彼女が言った。
「怪我の功名とも言う?」2人で顔を見合わせて大笑いした。
翌日からまた私のお弁当作りが再開した。今日のお弁当は、ハンバーグだ。
フリーアナウンサー。Date fm「Morning Brush(7:30~11:00)木・金曜担当。元ミヤギテレビ。おいしいものを食べたい欲が人一倍強く、趣味は季節の手仕事というオーガニックオタク。2人の娘の子育てと仕事、自分時間のバランスが目下の課題。
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